殿様千石たこ道中


台本の裏知識


渋兄ィさんの、三匹が斬る!の台本に関する書き込みをまとめてあります。


1.第一話『十万両、ここが名代の浮世風呂』

 先日、三匹が斬る!の台本を手に入れました。未公開場面を含め、台本ならではの情報をお伝えして行きます。今回は第一話です。

 第一話の時点で『三匹が斬る!』というタイトルはまだ仮題だったようです。このまま正式タイトルになりました。タイトル考えた人すばらしいです。第一話のサブタイトルは『凄い奴らがやって来た』といつもとちがう雰囲気でした。これは変更されてしまいましたが、単純ながらストーリーの展開が読めないタイトルなので、個人的にはこっちの方が好きです。

 内容は、放送されたものとほとんど同じです。第一回目ということもあってか、せりふもほとんどが台本のままの言い回しでアドリブもあまりないです。三匹の年齢は書かれてませんが、お恵は17歳と書かれています。

 風呂屋の番台にたこ(当時はたこではなく『吸い出し』と呼ばれてましたが)が、思いきり気取って「いらっしゃいませ」。お客の女が驚き「あんただれ!?」に対し「陣ちゃん」はアドリブ。

 逃げてきた三次を助け、追っ手を千石が相手をするシーンは、台本ではしっかりたたきのめしてますが、放送では刀を抜くかと思えば舌をだし、堂々と立ち去ります。CMのための変更でしょうか?今回はこの程度です。まだ何冊かありますので、また報告していきます。


2.第三話『敵討ちの、乙女も愛でよ秋花火』

 何となく連載になってしまいました。初代シリーズ第三話『敵討ちの、乙女も愛でよ秋花火』です。

 第三話目には三匹が斬る!も正式にタイトルになり、サブタイトルもいつものように五七五でできています。制作ナンバーも三回目、出演者の方々も慣れ、キャラクターをつかんできたのか、アドリブもかなり飛び出します。バカヤローとけなしたはずが遠くで一礼する千石に対し、たことお恵が笑顔で手旗信号のように手を降りながら「バカヤロ〜」をはじめ、書ききれないほどです。

 見ていてアドリブっぽいものは間違いなくアドリブです。今回は未公開シーンがいくつかあるので、そちらを中心にお伝えします。

 まず、千石を仇、平田勘兵衛と間違えてしまった娘、八重が疲労のため寝込んでしまった場面です。カピタンが馬にのって街道を往く場面の次に入る予定でした。台本の気分を味わって頂くためそのまま掲載します。

 20(出演場面番号)旅篭
 ついに寝こんでしまった八重。
慎之介「旅の疲れだ。一日寝ればきっとよくなるよ」
小 平「やとつかんだ仇の消息、寝る間も惜しんで追いつきましたのに」
お 恵「焦っても仕方ないわ、陣内さんの言った通り、仇はまだこの宿場にいますよ」
小 平「そうでしょうか」
慎之介「肥前か、遠いなァ」
小 平「はい」
慎之介「俺は薩摩だ」
小 平「そうですか」
慎之介「主従二人きりか」
小 平「始めは、もっとおりましたが、七年の歳月、一人欠け、二人減りで・・・」
お 恵「判んないなァ、顔も知らない人を仇だって追っかけなくちゃいけないなんて」
慎之介「それが武士(さむらい)だ」
お 恵「(八重の方を見て)私と同じ歳だって。何んか楽しいことあったのかしら」
 慎之介も、八重を見る。

 というシーンです。特にストーリーと関係の無い場面なのか、カットされました。

 次のシーンはカピタン一行の食事シーンです。カピタンの行列を覆面の盗賊が襲う場面の前にありました。

 34 丘の上
 見はらしのよい開けたところ。休息をとっているカピタン一行。見ている野次馬たち。
野次馬一「話には聞いていたが、本当に紅毛なんだなア」
野次馬二「獣の肉を血のついたまま食うから紅くなっちまうんだと」
野次馬三「ありゃなんだ。何んか赤いもの飲んどるぞ、あれが獣の血か」
 その赤いもの(ワイン)を飲みながらカピタン一行の食事。蝿がうるさく飛んでいる。
 出迎え役の勘兵衛、あわてて蝿を追う。とびまわる蝿。笑う紅毛人たち。
 平四郎、さっと食卓のフォークを投げる。つきささったフォークは見事蝿をとらえていた。感心するカピタン。

 というシーンでした。恐らく人種的な問題があるためカットされたものと思われます。まだまだ貴重な未公開シーンがあるのですが、長くなってしまったのでまた次回に書きます。


3.殿様の兄(未公開シーン)

 第三話『敵討ちの、乙女も愛でよ秋花火』の未公開シーンをお伝えしております。今回はカットされた台詞です。なにげない台詞ですが一大スクープです。

 二十両で勘兵衛に仕官を譲った殿様。その勘兵衛が二十両を持って殿様の前に現れ、酒を酌み交わすシーンで発覚しました。勘兵衛の台詞「不思議な衛縁でお近付きになれた。平田勘兵衛、人生四十五年、始めて、友人を得た思いです」のあとです。本当は大きな文字で表現したいところですが、無理なのでこのままです。

平四郎「故郷に、兄がおります」
勘兵衛「兄上」
平四郎「要領の悪い男です。損ばかりしている。・・・似ておられる、・・・や、失礼。ハハハ・・・」

 殿様自らが兄のことを語るシーンです。第一話でたこが殿様の身の上を予想しますが、兄がいて出来が悪いなど的確に当てています。恐るべし、燕陣内。さて、兄のことを語る台詞だけがカットされていたところをみると、この段階から殿様の身の上を秘密にする計画が進んでいたのでしょうか。

 次に、先日掲示板で話題にあがった通行手形の問題ですが、千石が敵に間違われる場面で「俺の名は、久慈慎之介だ。道中手形も所持しておる」と言ってました。

 最後にエンディングですが、第一話の時もそうだったんですが、このころは台本にナレーションというものが存在していませんでした。放送ではナレーションとともにスタッフロールが流れ、その背景でまだ物語が続いています。が、エンディングが始まっているため、何を言っているかは確認出来ませんでした。その台詞も台本に書かれていたので掲載します。

 八重と勘兵衛の妻千代を見送る三匹とお恵。
 遠ざかる八重たち。
お 恵「武士を捨てて江戸でくらすそうですよ」
陣 内「七年をふと気が付けば行かず後家・・・ってね」
慎之介「(一喝)黙れ!七年如きあの若さで必らず取返す」
平四郎「千石、あの娘(八重)、追うなら今だ」
慎之介「・・・」
陣 内「そうだ。殿様はもう一人(勘兵衛の妻)の方がいい」
平四郎「・・・」
陣 内「それで、あたしはお恵さんと・・・」
お恵、陣内につかまれた手をふり切って歩き出す。
慎之介「ハハハ・・・」
平四郎「ハハハ・・・」
 旅行く三匹。
 中仙道は今日も日本晴れである。     完

 と言う台詞が隠れていたのです。それでは今回はこのへんで。


4.第4話『赤トンボ、花嫁行列通りゃんせ』

 久々に書き込まさせて頂きます。前回の一大スクープ、殿様の兄に対する皆様の絶妙なリアクションありがとうございました。今回は第4話『赤トンボ、花嫁行列通りゃんせ』です。

 千石が逗留した宿屋が、藩の世継ぎになる若様抹殺を企む一派に客を人質に占拠される話です。ストーリーは宿屋の主人とその息子(台本によると8歳)を中心に展開します。

 元武士の父親は強いと信じていた息子が、宿屋を占拠した浪人にいたぶられるのを目の当たりにしてしまい、絶望しつつも、命がけで自分を逃がしてくれた父親がどういう人間か、幼いなりに理解するというものです。

 この話での三匹の合流地点であり、お恵が団子作りの修行をする団子屋ですが、放送されたものではおじいちゃんでしたが、台本では団子屋はおばあちゃんです。老婆と明記されています。なぜ変更になったのかは不明です。

 次に、若様お国入りのため花嫁行列を装いますが、二両で雇われた花嫁役の農家の娘、放送では『ちよ(だったかな?)』という名前でしたが、台本では『ユリ』というなまえでした。変更の理由は農家の娘っぽくない名前だからでしょうか。ちなみに年齢は17歳、お世継ぎ鶴丸は10歳ということです。ほかは年齢が明記されていません。

 第4話目にして初めてナレーションが登場(?)します。しかし、いつものナレーションと台詞回しの雰囲気が違うのです。そのまま掲載します。

N 「この山の中にも父と子がいます。いいえどこに行っても、人の世は、親と子の情愛にあふれています」
 四人(三匹とお恵)はまるで家族のようにじゃれあっている。
N 「そうした肉親の愛情にこの三匹と一匹の雌猫が殊の外感じやすいのは、あるいはこの四匹がみんな孤独のせいなのかもしれません」

 この後の台本からはまたナレーションがなく、当初はナレーション無しの作りだったと思われます。どうやら殿様の兄のようなスクープはもうないかもしれません。それでは今回はこのへんで失礼させて頂きます。


5.第6話『鬼と呼ぶ男に惚れて薄化粧』

 表紙に『改訂台本』と書かれているためか、内容にほとんど変わりはありません。役所さんや小朝師匠は、台本の台詞を自分なりの言葉に変えて演じているのに対して、高橋さんはほとんどが台本どおりの台詞を自分のものにして演じているようです。

 初期の殿様はキャラクターがちょっと違う、という話題も出ましたが、刀を捨てた千石が、恩人・山崎東庵の仇を討つため高札を立てにゆくシーンで、カットされた印象的な台詞がありました。

 高札を見て怒る番屋の連中。やり合う所を駆けつける半次郎。高札を見てがくぜんとし、十手をかまえて突っ込んでくる。殿様は半次郎に、見回りに来た関八州に洗いざらいぶちまけるので、自分たちを捕まえて関八州に取り調べさせるように言う。

 それを横で聞いた千石が、「面白い!それで行こう。おぬしのワル知恵もなかなかだな」この言葉から初期の殿様の策士的な、正体不明のクセ者っぽい感じが出ている気がします。

 第6話は以上です。


6.第10話『湯の里は地鳴り剣鳴り腹も鳴る』

 茶店で休む殿様とお恵。そこに名物の地震が。飯台の下に潜り込むお恵。実は台本ではお恵が殿様の袖をつかみ、二人で飯台の下へ。

 恐がるお恵に対して落ち着いていた殿様。実は台本では恐がっているのは殿様。お恵は「これ位の揺れで怖がってたら、喧嘩神興の上で大団扇振るえるもんですか」と、気の強いはねっかえりの小娘らしい台詞です。

 話題になった凄腕用心棒は仙十郎という名前だそうです。千石との初対決では袖を切られ、「なかなかやるじゃないか。褒めておく」という言葉を残して去りますが、台本ではそのあとに、「たが、まだまだだ」という、自信にあふれた言葉を吐きます。初期のシリーズは仙十郎をはじめ、凄腕の悪者がたくさんいた気がします。

 湯が出た花乃屋を奪うため、仙十郎は、役者上がりの女を側室に仕立てて、食中毒を起こさせたかのようにして宿を奪う。殿様は女の正体を暴くべくのりこむが、尻尾をつかめない。「大した女狐だ」という殿様の所へやってきたお恵の一言でひらめく殿様。

平四郎「千石、お主が一目置いている遣い手のことだが」
慎之介「それがどうした」
平四郎「相当な狸だ。もうすぐ正体を見せてやる」

 その後、女を裸にして柱に縛り付ける殿様ですが、台本では狸の置物に縛り付けられており、少ししゃれがきいています。

 対決のシーン。たこの槍が折られて(切られて)しまいます。「おじいちゃんの形見なのに」はアドリブです。この槍は台本では『手槍』という名称になってますが、脚本家によって『三段槍』という名称だったり一定してないです。

 千石と仙十郎の決闘。少しだけ雰囲気が違います。台本のまま記載します。

 平四郎、後退りながら、
平四郎「千石」
 近づいて来る慎之介。
 刀を納めて、
平四郎「お主に残して置いたぞ」
仙十郎「勝てると思うのか」

 慎之介に向きを変えた仙十郎、刀を鞘に戻し、挑むように懐手にする。慎之介、無言で刀を構える。其処此処から湯が吹き出ている。

 慎之介、徐々に位置を変えて移動する。懐手の仙十郎、慎之介を次第に追い詰める。岩を背に貼りついた慎之介。仙十郎、ほくそ笑む。居合抜きの瞬間を待ちかねている。仙十郎の手が懐から出た。

 そのとき、足元から勢いよく湯煙が出、湯が吹きだし、立ち昇る!慎之介、突進して剣をふり降ろす!仙十郎の手、一瞬速く刀の柄を掴んで抜きはなったが、既に慎之介の剣はふり降ろされている!

 仙十郎の額に血が滲む。次の瞬間、突っ伏す仙十郎。刀を納めた慎之介、片手拝みして、去ってゆく。

平四郎「(見送る)・・・」

 他にも、最後の場面でたこが「お恵さんを殿様に預けとくのもきになるし」という台詞からたこのお恵に対する想いが描かれていたり、この回では「縁を斬る!」といってやくざの親分をたたき斬った殿様、実は他の回でも「〜を斬る!」と言って黒幕を成敗する姿が描かれ、これを決め台詞にする予定だった傾向がみられます。

 長くなりましたが、次回もタイムリーな時期に書き込みます。この回で疑問のある方、答えられる範囲でしたら答えられるかもしれません。それでは、また。


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