殿様千石たこ道中三匹が斬る!2002Ver.


管理人の雑記


作品を見終わっての感想を書きます。「素人の発想」な部分も多々あるかと思いますが、あくまで作品を観る視聴者は「素人」ですので、「オトナの事情」は考慮せず、あくまで純粋な感想を書きます。

1.設定について

 まず登場人物の設定や背景について、第一話でも最終話でもほとんど触れられなかったのが残念です。

 公式ページやテレビ情報誌には掲載されていたので、それらを目にした人は三匹の旅の目的などある程度は把握できたと思いますが、それ以外の人は全11回では感情移入が難しかったと思います。

 いくら若い人向けの時代劇とはいえ、インターネットに接続できない高齢者にも分かりやすく、人物紹介があったほうが良かったたと思います。

 と言っても、公開されている設定も本編ではほとんど使われていなかったりしますが…。

 旧・三匹はそれぞれ貫き通す信念のようなものがあって分かりやすかったのですが、今回の作品で最もアピールしたい点が何だったのか、最後までよく分からないままでした。

2.人物について

 以前、キャストが発表になった時に僕は「個人的に、三人組の作品を考えるとき、『天然ボケ・計算ボケ・ツッコミ』『座長・二枚目・三枚目』という風に人物像を分けるが、この御三方は設定次第でそれぞれがどの人物も演じることができるように思う」と書いた記憶があります。

 今でもその考えは変わっていません。ただ、レギュラーメンバーの人物設定に不満が残ります。

 「三匹が斬る!」という作品は、個性的な三匹がもともと主義主張も価値観もバラバラで、主要人物が斬られることをきっかけとして怒りのもとに結束するからこそ、斬られる人物にも異議があり、主人公が3人であることの意義があるのだと思います。

 今回の作品は、キャラの個性を生かしきれていなかったと思います。バランスを重視しすぎたがために「無難な」作品に仕上がってしまったのではないでしょうか。

 今回の作品のように三匹が一緒に行動することが多いと特に、いい人の「若大将と先生」と、ワルに徹しきれない「極楽」の2対1の多数決で、三匹がなあなあで協力しているように感じました。

 先生がどっしりと構えていたため、旧シリーズの「痛快」のようなアンバランス感や浮き足立った印象はありませんでしたが、だからこその物足りなさがありました。

 先生を真ん中でどっしり構えさせておくならば、若大将と極楽を真逆のベクトルにもっと突っ走らせてあげたほうが良かったのではないかと思います。

 2002年ということでサッカーに例えると、「良いパスを出すミッドフィルダーは揃っているのに、最後にシュートを決めることのできるフォワードがいない」という印象です。

 「三匹が斬る!」は原作のない「痛快時代劇」だからこそ、もっと思い切ったことできたのではないかなと思います。

3.序盤の展開について

 最初の3話、「先生に携わった女性が殺されて立ち回り」というパターンが続いたため、無意味な死について批判の声が多数寄せられました。

 僕としては、三匹は何の権力を持たない「浪人」である以上、最後の立ち回りで悪人を斬るためには「重要人物の死」という展開も仕方がないと思います。

 もし、主要人物を生かしたまま三匹が立ち回りで多くの悪人を「非合法に」斬ったことによって、「日本のテレビをつまらないものにした」倫理団体の圧力で時代劇そのものが自主規制させられるようになっては、本末転倒ですから。

 ただ、初期の旧・三匹のように、重要人物を生かしたまま立ち回り…というパターンも含めて、いろいろなパターンの話があっても良かったとは思いますが。

 むしろ僕が納得いかなかったのは、三匹が揃っているのに、三匹の不注意で命を落とす人が多かったことです。

 「三匹が斬る!」は、ひとりひとりでは唯の浪人であるが、三人集まれば巨大な悪にでも立ち向かえる…という「特撮ヒーロー」的な魅力があると思います。

 だからこそ、ひとりひとりは未完成で人間臭さがあっていいと思います。旧・三匹においても、殿様や千石が一人の時に不注意で仲間を死なせることが多くありました。

 「若大将の青臭さ」について批判の声が寄せられたこともありましたが、先生や極楽がフォローしていた点において、僕は作品の魅力だと考えています。しかし、今回の作品では三匹揃っている時に絶対的な存在感がなかったのは大きな失敗だと思います。

 三人とも敵の罠に気づかずに重要人物を死なせてしまい、「許さん!」と乗り込んでいく展開、非常に後味が悪かったです。

4.中盤の展開について

 中盤での大きなポイントは、やはり極楽の戦線離脱でしょうね。

 登場人物のインパクトが薄いという声が上がるなか、大きなテコ入れを兼ねて、立ち回りの巧い若手の時代劇俳優さんでも投入するのかと思いきや、極楽の変わりに加わったのが、立ち回りのできない借金取りという設定のすっぽん。

 そんな中、初めて若大将と先生だけの立ち回りになった回で使われていたのが、延々とスローモーションと早回しの繰り返し。「それまでの展開も何もかもぶち壊し」だと感じました。

 作品への思い入れが強ければ強いほど、主演俳優の「生の立ち回り」の魅力を信頼せず、大切にもしない作り手の姿勢は、ファンとして悔しく、許せませんでした。

 旧作「三匹が斬る!」シリーズと比べられて立ち回りの未熟さを批判する声もありましたが、立ち回りは一朝一夕で習得できるものではない以上、個々人の剣技の上達・カット割りの魅せ方・殺陣の付け方などで追い越す可能性は充分にあると思いますし、それを期待していました。

 旧シリーズの立ち回りにおいて、1人の落語家さんの努力の成果・進化を見せつけられてきたファンとして、若大将の立ち回りの最初から最後までスロー・高速を繰り返していた今回の編集は、小手先だけの取り繕い、もしくは誤魔化しにしか映りませんでした。

5.終盤の展開について

 極楽の戦線離脱もあり、不完全燃焼なまま終わってしまったという印象です。

 すでに完成してしまっていた「また又」や「新」の頃の旧三匹と違って、まだまだおもしろくなる余地を残した終わり方でした。「自由」であるが故に、人物設定と脚本次第でいろいろな話が楽しめる作品だったと思いますし、アドリブが頻繁に飛び出せば、「緊張」と「緩和」を含んだ娯楽作品として完成すると思います。

 スタッフ・キャスト総入れ替えで望んだ作品であり、旧作の面白さを継承しつつ新しいものに挑戦しようとした作品であった反面、キャストの設定が大雑把であるなど、最後まで旧作の人気に頼り、縛られた作品だったなという印象です。

 シリーズを重ねるごとに出演者の掛け合いやスタッフとのコンビネーションに味が出てくるのが「三匹が斬る!」という作品ですので、続編があるなら期待したいです。

 最後に話は変わりますが、2002Ver.放送開始時のテレビ情報誌等には、「かつて役所広司らが主演して…」といったような記述がありました。おそらくサントラの解説本と同じで「痛快」のことを指して言っているのでしょう。ただ、一ファンとしては役所さんの千石が一番好きですが、主演はやっぱり高橋さんを指してほしいという思いがあります。


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